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22坪の狭小地で叶えた、日々の営みを愉しむ棲み家
2022/8/23
2024/10/25
実例

22坪の狭小地で叶えた、日々の営みを愉しむ棲み家

ハウジングこまち編集部
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穏やかな時間が流れる、隠れ家のような住まい

海岸に近い砂丘地域に立つN邸。

昔ながらの住宅街に、家々が肩を寄せ合うように集まっている。

押し縁がリズムを刻む杉板外壁で覆われたN邸。プライバシーに配慮し、外から見える窓は最小限に抑えている。建物手前は車1台が止められる駐車スペース。

Nさんご夫婦と小学生の娘さんの3人で暮らす住まいがあるのは、路地に面した22坪の小さな土地。

「元々ここに立っていた親戚の方の家を借りて住んでいたんです。私は古いものが好きで、築60年以上経つその建物を気に入っていましたが、傷んでいるところも多かったことから、この土地を購入して建て替えをすることにしました」(奥様)。

新しい家の設計は、同じ地域に住み、家族ぐるみで交流している友人の建築士を頼ったという。自然豊かな山間部での暮らしも考えていたご夫婦は、リビングに面した庭、土間、畑に小屋、駐車スペース…と、新居で叶えたい要望を挙げていった。

しかしながら、22坪の土地の建ぺい率は60%。建築面積は最大で13坪程度となる。

建築士は最初に最大限の広さ(間口2.5間×奥行5間)の長方形の平面を描き、そこに水回りなどの生活に必要な最小限の設備や空間と、夫婦の要望を当てはめていった。

最終的にでき上がった平面は、手前側と奥側にそれぞれ10畳の空間を設けたシンプルなもので、基本的には1階・2階・屋上階全て同様の構成になっている。

1階の手前には玄関を兼ねた土間空間、奥には寝室と水回りを集約。

広い玄関土間。「友人家族と集まる時、大人は2階で食事を楽しみ、子どもたちはここでプロジェクターを使って映画を楽しんでいます」(奥様)。
1階の奥には家族3人で寝るのに十分な広さの寝室が。多目的に使えるようにベッドは置かず、毎日布団を上げ下げしている。

2階の手前はリビング、奥は食堂で、間には坪庭のようなバルコニーが設けられている。

リビングは食堂と同じ10畳。坪庭のようなバルコニーには外からの視線が届かないため、カーテン不要。

そして、急な階段を上がると3畳程の小さなペントハウスと屋上に至る。

ペントハウス。有孔ボードにご主人の道具や本などが飾られている。

畑や小屋など、狭小地では難しいと思われた要望も諦めることなく実現できたが、その秘密は屋上階にある。

ペントハウスを挟んで2つの屋上があり、北側はくつろぐためのスペースとして設けられた。そこから見るペントハウスはさながら小屋のような佇まい。

中の一角はコーヒーの焙煎スペースになっており、ご主人が焙煎・ブレンド・抽出したコーヒーが、小さな回転窓から差し出される。

北側の屋上から見るペントハウスと周囲の景色。晴れの日には空を感じながらくつろげる場所。床には腐りにくいイタウバという堅木を採用。

「ここでごはんを食べたり、夏はプールを出したり。流しそうめんもやりましたね」と奥様。

もう一方の屋上はご主人の家庭菜園。木製プランターではトウモロコシやナス、ブドウやスイカ、お米など、毎年少量ずつ多品種の野菜や果物、穀物を育てているという。水やりには雨水タンクに貯められた雨水を活用するなど、自然を利用した合理的な仕組みも取り入れている。

家庭菜園として使っている南側の屋上には、さまざまな種類のプランターが並ぶ。

古道具がなじむ食堂に、ふわりと漂うコーヒーの香り

手間暇を惜しまない暮らしぶりは、2階の台所にも見て取れる。例えばNさん夫婦は、食器の水切りには竹籠を、炊飯には鉄鍋を使う。コーヒーを淹れるのもハンドドリップだ。

壁付けの造作キッチンがあるだけの空間に、以前からNさん夫婦が愛用していた古い家具が配されている。テーブルは工作台に足場板を張ったもの。
古い棚は食器棚兼カウンターとして活用。中には夫婦のお気に入りの器が所狭しと並んでいる。

家事の時短を求める人は多いが、日々の営みの中に隠された楽しさに気付こうとする人は少ないかもしれない。しかし、Nさん夫婦の話を聞いていると、実はそんなところにこそ人生の面白さが詰まっているように思えてくる。

1坪のバルコニーは、プライバシーを保ちながら光を採り込めるように家の中央に配している。鉢に植えられているのは、オリーブやローズマリー。

シンプルにゾーニングされた小さな家を、お気に入りの家具や道具でしつらえて暮らすNさん家族。

狭小地という制限を感じさせない心地よさがここにある。

2階の廊下から眺める食堂。クリの床は3年の月日が経ち、白っぽく変化している。コーヒーの抽出はまろやかな味わいを引き出すネルドリップで。
ペントハウスから階段を見下ろす。急勾配でも上り下りしやすい台形の踏面がユニーク。
程よいスケールで親密な空気が生まれる食堂。窓を開放すれば心地よい海陸風が通り抜けていく。
経年変化した木製建具や、鉄のフレームとすりガラスを組み合わせた窓などが味わい深いポーチ。

【DATA】
新潟市 N邸
延床面積 85.10m²(25.74坪) 
1F 39.75m²(12.02坪) 
2F 39.96m²(12.09坪)
ペントハウス 5.39m²(1.63坪)
家族構成/夫婦+子ども1人
竣工/2019年3月
構造/木造軸組工法

(取材時期:2022年4月)

そりっど設計室

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